突然ですが、猫ちゃんの行動で歯がかゆいのかな~と思ったことはありませんか?
わたしが以前飼っていた愛猫しゅりも、頻繁に前脚で口元をぬぐうようなしぐさをみせたりしていましたが、はじめは毛繕いかと思っていたんです。
でもあんまり頻繁にするので、予防接種の時期ということもあり、そのついでに動物病院の先生に相談してみました。
そうしたら、「予防接種よりもこっちの方が問題だよ」と言われ、とってもびっくりしたのを覚えています。このときの原因は口の中の病気でした。
普段何気なく見ている行動、「言われてみればそうだった」は多いですよね。
猫が歯をかゆがる原因にはどんなものがあるのか、原因別にチェックリストを作ってみたので、当てはまるものはないか、ぜひ確認してみてください。
「こんな行動もみられてた」と気づくきっかけになるかもしれませんよ。
まずは口の中について説明しますね。
猫の歯の基本構造

まずは猫の歯について説明しますね。
猫の歯には「切歯」「犬歯」「臼歯」という名前が付いた3種類の歯があります。
乳歯の本数
切歯・・上:6本 下:6本 計12本
犬歯・・上:2本 下:2本 計4本
臼歯・・前臼歯:上6本 下:4本 計10本 合計26本
永久歯の本数
乳歯の本数+後臼歯・・上:2本 下:2本 計4本が追加されて 合計30本
そして、猫の歯の構造ですが、外側から『歯髄』『象牙質』『エナメル質』の3層からなっています。
- 歯髄・・神経や血管が集中している部分
- 象牙質・・歯髄を囲っている部分
- エナメル質・・表面の固い部分
そして、歯は歯周により支えられているのです。その歯周というのが、『歯肉(歯茎)』『歯槽骨(しそうこつ)』『歯根膜(しこんまく)』『セメント質』で成り立っています。
歯と歯周の間、わずか数ミリの溝、これが歯周ポケットなんです。
そうそう、その歯周ポケットですよ。
では猫が歯をかゆがる原因を探ってみましょう。
猫が歯をかゆがる原因その1:生えかわり

さて、猫が歯をかゆがるとき、まずは年齢や月齢を確認しましょう。もしかしたら生え変わりの時期かもしれません。
猫の歯の生えかわり時期
猫ちゃんの乳歯の生え始めと、永久歯への生えかわり時期はこちらですよ。
乳歯の生え始め・・生後3週ごろ~生後7週(約1ヵ月半)ごろ
永久歯への生えかわり:生後11週ごろ(3ヵ月)~生後25週(約6ヵ月)ごろ
人と比べるとすごく早いですよね。
生えかわり時期の行動チェック
では生えかわるときに猫ちゃんたちはどんな行動をしているでしょう。
- 人の手や物に噛みつく
- 口臭がする
- 歯茎からの出血
- 食欲がない
①人の手や物に噛みつく
歯が下から生えてきていることで歯ぐきがムズムズかゆくなってしまいます。そのため、人の手や物をカミカミしてしまうんです。
生えかわり時期に歯をかゆがる原因は生えてくる歯による刺激なんですよ。
ただ、硬いをもの噛むことで口の中を傷つけてしまうこともあるので、噛んでも安全なものにしましょう。
そして猫ちゃんの口の中にはバイ菌もたくさんいるんです。人の手を噛むことで、噛まれた人が感染症にかかってしまうことも。
②口臭がする
猫ちゃんの歯は、人の歯のように乳歯が抜けたあとしばらく生えてこないということはなく、乳歯と永久歯が同じ場所で数日間一緒に生えていることも多いのです。
そのため食べカスが挟まりやすく口臭の原因となります。また、生え変わるときの出血が口臭の原因になっていることも。
③歯ぐきからの出血
乳歯が抜ける際に出血したものです。初めて見ると心配になりますが、数分で止まれば問題ありませんよ。
④食欲がない
乳歯が抜けそうになってグラグラしていることで痛みがあり、食欲が落ちてしまう猫ちゃんもいるんです。
そして、猫ちゃんの乳歯は知らない間に抜けて、そのまま飲み込んでしまうことも。なので、気が付かないうちに生えかわってたよ~という方も多いんですよ。
なので、もし乳歯を見つけられたらとってもラッキーなんですよ。
わたしは1本だけ見つけたことがあります。大事な宝物なのでこちらのケースに入れて保存しているんですが、名前も入れてもらえるので、まさに宝物入れにぴったりです。
猫ちゃんたちの歯の生えかわりについて、こちらで詳しく説明していますのでご覧ください。

では次に、歯がかゆいと感じたときに考えられる原因として、歯周病について説明していきますね。
猫が歯をかゆがる原因その2:歯周病

ちなみに以前わたしが飼っていた「しゅり」もこれが原因でした。3歳以上の猫の80%はこの歯周病にかかっているといわれているほど、口の中の病気『断トツの第1位』なのです。
歯周病って聞いたことはありますか。歯周病について少し説明しますね。
歯周病は歯肉炎と歯周炎の総称
歯周病というのは、歯肉炎と歯周炎をまとめた呼び方のことです。まずはそれぞれについてあげてみました。
歯肉炎 | 歯周病の初期段階。 歯肉が赤く腫れ、痛みを感じるなど、炎症が起こっている状態。 |
歯周炎 | 歯肉炎が進んだもの。 歯周ポケットの奥で骨まで炎症が広がったもの。 |
では、これらは何で起こるのでしょう。
歯周病の原因
歯周病の原因はそう、食べカスとだ液中の成分なんです。
これが歯に付くことで歯垢となり、約1週間ほどで歯石に変化。この歯垢や歯石に付いた細菌の中で、歯周病菌という細菌が増殖することで歯周病は発症します。
次に症状です。チェックリストを使って症状が現れていないかをチェックしてみましょう。
歯周病を疑う行動をチェック
猫ちゃんのどんな行動や変化が歯周病を疑うものになるのでしょう。
- 口臭が気になる
- 歯が黄色くなった
- 歯茎が赤くなった
- 歯肉から出血する
- ゴハンに時間がかかるようになった
- ゴハンを残すようになった
- 片側の歯でしか噛んでいない
- よだれの量が増えた
- 顔を触られるのを嫌がる
- 口を家具や床などにこすりつける
- 前脚でしきりに口元をぬぐう
- くしゃみや鼻水が出る
- グルーミングをしなくなった
かゆくなる原因はずばり炎症。炎症が起きることでかゆみの神経に働く物質が放出されます。そのせいでかゆいと感じるんです。
また、口を床にこすりつける、前脚で口元を触るといった行動はよだれが増えたことが原因であることもありますよ。
では次に治療についてですね。
歯周病の治療
残念ながら歯周病は自然には治りません。そのうち治るかも~はないのです。歯周病の治療は主に3通り。
- 歯石の除去・・全身麻酔で歯や歯周ポケットについている歯石を除去
- 薬の投与・・歯周の炎症がひどいときや、抜歯の後などの感染症予防に使用
- 抜歯・・歯石を取り除いても治せない場合に選択
これら以外にも補助的に治療として使われるのが、皆さんもきっと耳にしたことのあるラクトフェリン。口内環境を改善させ、口の中の病気の治療に役立っているんです。こちらの記事で詳しく説明していますのでどうぞご覧ください。

そうなんです。歯周病の治療方法の一つである抜歯、場合によっては全部抜くという方法もあるんです。
そんな歯がない場合、餌はどうすればいいか悩みますよね。でも大丈夫。ちょっと工夫をすることで、ちゃんと食べれるんですよ。
猫ちゃんは元々ほとんど噛まずに丸飲みする習慣があります。
歯が残っている場合は普段通りのドライフードも食べられるんです。ただし、はじめ2週間は柔らかいフード(ウエットフードやドライフードをふやかしたもの)に変えて、その後ドライフードに戻していきましょう。
そして歯を治療のために全部抜いてしまい、全く歯がないという猫ちゃんには、ウェットフードやドライフードをふやかしたものを与えるようにしましょう。
ドライフードのふやかし方についても説明していきますね。
準備するもの:いつものドライフード、水かミルク
- 水かミルクを人肌ぐらい(約35度~約37度)に温める
- ドライフードに温めたお湯かミルクをかけて浸す
- ドライフードが柔らかくなったら完成
食べやすくする方法はこちらで紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。

歯周病は進行しひどくなってしまうと全身に細菌が広がり、死に繋がってしまうこともある恐~い病気。なので早く見つけて早く対応してあげましょう。
歯周病についてはこちらで詳しくお話ししていますのでぜひご覧ください。

当てはまるものはありましたか。歯周病で当てはまるときには病院受診をおすすめします。
他にも歯ではなく、実はかゆいのは皮膚だったということもあるんです。
かゆいのは歯ではなく皮膚の可能性

これまで歯がかゆい原因とは何か説明してきましたが、口周りの皮膚にトラブルが起きていることで、口元をかゆがるしぐさがみられることもあります。
アレルギー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎とは皮膚に湿疹や炎症を起こしたもの。先ほどもお話ししましたが、炎症が起きるとかゆみも起こります。
アレルギー性皮膚炎は3種類にわけられます。
アレルギーの種類 | 原因 |
ノミアレルギー | ノミが血を吸う際、唾液が体内に入り込むことが原因 |
食物アレルギー | タンパク質が原因。肉のみならず、魚、大豆、小麦、じゃがいも等が原因 |
アトピー性皮膚炎 | 花粉やハウスダストが原因 |
これらはアレルギーの原因となるものを食べた、触ったといったことが引き金となり症状が出現したものです。
特に食物アレルギーやアトピー性皮膚炎は口の周りに症状が出やすいので、口元をしきりにかゆがる様子が見られるんです。
かゆみの原因が歯なのか皮膚なのか、口をかゆがるのは同じなのでわかりにくいですよね。そこで、見分ける方法はこちらです。
- 皮膚が赤くなっている
- ぶつぶつができている
- ただれやジクジクしている部分がある
皮膚にこのような症状がある場合はアレルギー症状の可能性があります。
それともう一つ、猫の口元にできるかゆみの原因がこちら。
猫挫瘡(ねこざそう)
猫挫瘡は通称「猫ニキビ」。
あごの下や唇、口角(口の端)にできやすく、はじめは黒い点に見えます。徐々に周りの毛が抜けて、赤い斑点に、更に進むと細菌感染を起こしたりすることがあります。
症状が進み炎症がひどくなると、かゆみが出るんです。かゆみが出てくると、家具や床に口をこすりつける行為はよく見られるようになります。
原因
- 食器に付いた雑菌
- ストレス
- 毛づくろいができていない
- ニキビダニ
- フードが合っていない
といったものがあります。人も体調が悪かったり、ストレスが溜まっているようなときにニキビができたりしますよね。
猫も免疫力が低下しているとニキビができやすくなるんです。
ただ人のニキビとは全く別物なので、人のニキビ治療薬は絶対に使わないようにしましょう。
皮膚のトラブル、見つけたらまずは一度動物病院を受診しましょう。
まとめ

歯がかゆいのかなと感じたときに考えられる原因、それぞれのチェックリストに当てはまるものはあったでしょうか。
ちょっとまとめてみましょう。
まず、月齢をチェック。そして歯の生えかわりかどうかを見ていきました。
歯の生えかわりの行動と変化
- 人の手や物に噛みつく
- 口臭がする
- 歯茎からの出血
- 食欲がない
そして次に考えられる原因として歯周病の症状がありました。
猫の歯周病を疑う行動と変化
- 口臭が気になる
- 歯が黄色くなった
- 歯茎が赤くなった
- 歯肉から出血する
- ゴハンに時間がかかるようになった
- ゴハンを残すようになった
- 片側の歯でしか噛んでいない
- よだれの量が増えた
- 顔を触られるのを嫌がる
- 口を床などにこすりつける
- 前脚で頻繁に口元をぬぐう
- くしゃみや鼻水が出る
- グルーミングをしなくなった
これ以外にも皮膚がかゆみの原因になっている場合もありましたね。
言われてみればこんな行動あったかも・・は、きっとこれからもあると思います。
一番大事なことは、猫ちゃんの行動をよく観察しておくこと。異常は早く見つけてあげましょう。
皆さんと猫ちゃんたちがいつも笑顔でいられるように参考になれば嬉しいです。

